Scientific and Educational Reports of the Faculty
of Science and Technology, Kochi University
Vol. 5 (2022), No. 10

更新統下総層群清川層産 Mizuhopecten tokyoensis (二枚貝:イタヤガイ科) の季節的殻成長の復元

吹本 樹1 ,近藤 康生2 

高知大学大学院理工学専攻 ; 780-8520 高知県高知市曙町2-5-1
    高知大学理工学部 ; 780-8520 高知県高知市曙町2-5-1
 


要旨

更新統下総層群清川層基底部より産出したイタヤガイ科の絶滅種 Mizuhopecten tokyoensis (Tokunaga) の左殻表面を観察したところ,本種に広く認められる鮫肌彫刻は,平行に配列するラメラに漸移することが分かった.同属のホタテガイ Mizuhopecten yessoensis や同科のイタヤガイ Pecten albicans にみられるラメラは 1日 1本形成されることが知られている.このことから,鮫肌構造を構成するユニットの幅を計測することで日単位の微細殻成長を復元できるだろう.この考えに従って,殻の日成長量変動と酸素同位体比の分析を併せて行った結果,殻高約 140 mm の分析個体(KSG-if005)には約 2 年分の水温変動が記録されており,成長障害輪が高水温期に形成された年輪と見なせることがわかった.さらに,このように日成長量変動パタンと酸素同位体比プロファイルを対比することで,清川層産の本種は高水温期に年輪を形成する一方,殻形成が活発であったのはおもに秋から冬であったことがわかった.このような一連の季節成長パタンは,おもに春から夏にかけて高成長を示す現生種のホタテガイやイタヤガイとは対照的である.

全文(pdf)

Received: February 23, 2022
Reviewed by anonymous referee(s), and accepted: June 21, 2022
Published: July 27, 2022


発行者:高知大学理工学部 〒780-8520 高知県高知市曙町二丁目5-1
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