Scientific and Educational Reports of the Faculty
of Science and Technology, Kochi University
Vol. 5 (2022), No. 6
近藤康生1,中西利典2,菊池直樹3,島内朝康4,奈良正和1
1高知大学理工学部地球環境防災学科 ; 780-8520 高知県高知市曙町2-5-1
2ふじのくに地球環境史ミュージアム ; 422-8017 静岡県静岡市駿河区大谷 5762
3玉名市教育委員会文化課文化財係 ; 865-0016 熊本県玉名市岩崎 163
4土佐女子中学高等学校 ; 780-0842 高知県高知市追手筋2-3-1
要旨
高知市追手筋地下の海成沖積層最上部で地層のはぎ取りを行い,層序と堆積構造を観察するとともに,貝類遺骸の同定と産状観察,貝殻および植物遺体の放射性炭素年代測定を行った.その結果,高知平野の西部にあたるこの場所では,縄文海進の最盛期以降に堆積した内湾泥質砂底の堆積物の最上位付近に,イヨスダレが分布した内湾泥底からイボウミニナやシオヤガイを多数含む泥質砂干潟への堆積環境の移り変わりが認められた.はぎ取りを行った層準の地層に含まれていた試料 13 点の14C 年代を測定した結果,底生動物による掘り込みや再堆積の影響が少ないと考えられる試料は 9 点あり,貝殻については最下部の内湾泥底の層準 (標高−3.7 m)で 5,360±30 14C yr BP(5,594−5,894 cal BP),泥質砂干潟の層準(標高−2.8 m)で 5,070 ±30 14C yr BP(5,300−5,579 cal BP)の年代値が得られた.また,泥質砂干潟の層準(標高−2.6 m)の貝殻と植物片の年代値の違いから,放射性炭素の海洋リザーバ効果は 330 yr と推定された.また,巣穴や貝類遺骸を多数含む干潟堆積物は斜交層理砂礫層に覆われ,さらにその上位は貝類遺骸を含まず巣穴もまばらな干潟堆積物へと移り変わったことがはぎ取り標本から読み取れる.
Received: February 23, 2022
Reviewed by anonymous referee(s), and accepted: March 11, 2022
Published: March 29, 2022
発行者:高知大学理工学部 〒780-8520 高知県高知市曙町二丁目5-1
Faculty of Science and Technology, Kochi University, Kochi, 780-8520 Japan
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