Scientific and Educational Reports of the Faculty
of Science and Technology, Kochi University
Vol. 2 (2019), No. 3

環形動物グアニジノキナーゼの多様性.多毛類Capitella sp.の細胞質型タウロシアミンキナーゼの遺伝子合成と完全な酵素パラメータ
Diversity in Annelid Guanidino Kinases. DNA Synthesis and Complete Kinetic Parameters of Cytoplasmic Taurocyamine Kinase from the Polychaete Capitella sp.

八木華奈子,鈴木知彦
Kanako Yagi and Tomohiko Suzuki

〒780-8520 高知市曙町2-5-1 高知大学理工学部比較生化学研究室

要旨

多毛類Capitella sp. は全ゲノムが解読されており,その情報から少なくとも2種類(細胞質型とミトコンドリア型)のグアニジノキナーゼが存在していることが分かっている.その酵素活性は同定されていないが,アミノ酸配列からはロンブリシンキナーゼ(LK)の可能性が指摘された.今回の研究では,Capitellaのリコンビナント細胞質型酵素を用いて,その活性を明確にすることを目的にした.先ず,そのアミノ酸配列に基づき28本のDNAオリゴマーを設計し,オーバーラップ・エクステンション PCR法により遺伝子を全合成した.次に,この遺伝子をプラスミドに組み込み,大腸菌内でリコンビナント酵素を発現させた.酵素はHis-tagを用いて精製した.利用できる4種類のグアニジノ基質(クレアチン,アルギニン,グリコシアミン,タウロシアミン)を用いて酵素活性測定を行ったところ,タウロシアミンについてのみ強い活性を示した.次に,異なる64点の基質濃度において酵素活性を測定し,完全な酵素パラメータ(4種類の解離定数:KaTau, KiaTau, KaATP, KiaATP,及び kcat)を計算した.ATP存在下の酵素と基質タウロシアミンの親和性を示すパラメータ(KaTau )は1.06 ± 0.125 mMであると決定され, この値は環形動物の他のタウロシアミンキナーゼ(TK)酵素の値(0.881-4.01 mM)と同等であり,Capitella酵素は主活性としてTK活性を持つことが分かった.また,タウロシアミンに対して副活性を示すEisenia LKでは,そのKaTauは15.3 mMであり,Capitella酵素(1.06 mM)よりも10倍以上親和性が低い.このことも,Capitella 酵素がLKではなくTKであることの傍証となる.今回の結果から,Capitella細胞質型酵素は,アミノ酸配列から予想されていたロンブリシンキナーゼではなく,タウロシアミンキナーゼであると結論される.

全文(pdf)

Received: January 23, 2019
Reviewed by anonymous referee(s), and accepted: January 26, 2019
Published: March 27, 2019


発行者:高知大学理工学部 〒780-8520 高知県高知市曙町二丁目5-1
Faculty of Science and Technology, Kochi University, Kochi, 780-8520 Japan
問い合わせ先(E-mail):serfst●kochi-u.ac.jp (送信の際は"●"を半角"@"に変更して送信してください)


高知大学理工学部
高知大学