Scientific and Educational Reports of the Faculty
of Science and Technology, Kochi University
Vol. 1 (2018), No. 1

アメリカムラサキウニのアルギニンキナーゼの酵素活性と無細胞タンパク質合成
Enzyme activity and cell-free protein synthesis of arginine kinase from Stongylocentrotus purpuratus.

土居 真侑子,丁野可愛,鈴木知彦
Mayuko Doi, Kaai Chouno and Tomohiko Suzuki

〒780-8520 高知市曙町2-5-1 高知大学理工学部比較生化学研究室

要旨

 アメリカムラサキウニ(Stongylocentrotus purpuratus)はグアニジドキナーゼ(GuaK)として,クレアチンキナーゼ(CK)と2種類のアルギニンキナーゼ(AK1, AK2)を発現している.この内,AK1は,他のGuaKと比較するとC末端側に50アミノ酸の伸長配列を持ち,その末端にはプレニル化シグナル配列を保有している.本研究の目的は,アメリカムラサキウニAK1のリコンビナント酵素を発現させその活性を明らかにすることと,プレニル化反応が起こりうる条件下でAK1を無細胞タンパク質合成系によって合成することである.
 アメリカムラサキウニAK1のアミノ酸配列(417残基: 46 kDa)を基にAK1遺伝子のDNA配列を合成した.次にその遺伝子を大腸菌の中で発現させ,47 kDaの分子量を持つリコンビナント酵素を精製した.アメリカムラサキウニAK1は,そのVmaxが0.91 µ moles/min・mg protein,アルギニンに対するKmが0.83 mM であった.
 アメリカムラサキウニAK1のmRNAを大量に発現させ,昆虫由来の無細胞タンパク質合成系を使ってAK1を合成した.プレニル化に必要なゲラニルゲラニル二リン酸を加えずに合成すると,47 kDaと41 kDaのタンパク質の両方が合成された.前者の分子量は,AK1のリコンビナントの酵素のものと一致し,完全長のタンパク質と思われる.一方,ゲラニルゲラニル二リン酸を加えてAK1を合成すると,41 kDaのタンパク質のみが合成された.この分子量は,AK1のC末側50 アミノ酸の伸長部分が切断されたものとほぼ一致した.今回使用した無細胞タンパク質合成系では,内在するタンパク質分解酵素により,合成された完全長のタンパク質AK1のC末側 (6 kDa) が切断されると思われる.

全文(pdf)

Received: January 10, 2018
Reviewed by anonymous referee(s), and accepted: January 16, 2018
Published: March 31, 2018


発行者:高知大学理工学部 〒780-8520 高知県高知市曙町二丁目5-1
Faculty of Science and Technology, Kochi University, Kochi, 780-8520 Japan
問い合わせ先(E-mail):serfst●kochi-u.ac.jp (送信の際は"●"を半角"@"に変更して送信してください)


高知大学理工学部
高知大学